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2013/03/16

木賃デベロップメント

建築家・施工者・不動産屋、各々立場の異なる3者の共同プロジェクト「木賃デベロップメント」
の手掛ける木造賃貸アパート「サクラ・アパートメント」が完成しました。

有楽町線「新桜台駅」徒歩1分、西武池袋線「江古田駅」徒歩7分の商店街沿いの建物です。
当日は参加自由。味わいある木造賃貸アパートの魅力を感じたい方や住んでみたい方、気軽にお越し下さい。

部屋も魅力的ですが、今回のプロジェクトの取り組みも自らがリスクを背負いつつも攻めてる感じが素敵なので、
関係者の皆さんにお話を聞かせて頂きました。

インタビュアー:大山啓/TATO DESIGN(株)

今回の舞台は「サクラ・アパートメント」

築35年の木造アパートは、駅隣の立地にも関わらず、ここ最近20年間は、ほぼ空室だった。これがこのアパートの工事前の状況です。
風呂無しで内装は多少手が加えられていたとしても、ほぼ建築当初のまま。意外と都内の駅前の好立地でもここと同じ状況のアパートが沢山あります。多分、それは地元の地主が所有しててお金に困ってなくそのままにしているか、お金が無くてどうする事もできないかの2パターンです。そこに目を付けたのが、今回の出演者、不動産屋の田中歩、施工者の福井信行、建築家の内山章の3者。
「サクラ・アパートメント」は自分達が可能性を感じる建物が使われていない状況にある、いわゆる ”もったいない建築" をそれぞれ立場の違う3者が自ら出資して、再生・運営してゆくプロジェクトです。

不動産屋の思い:田中 歩/(株)あゆみリアルティーサービス

僕の通常の役割は簡単に言えばプロジェクト収支を計算して、オーナーに説明して納得してもらう事。ただ、自分達が出資者である「サクラ・アパートメント」は、それ以上に物件に深く関わる事で見えてきた魅力もある。それが、街にひっそり佇む「おばあちゃんアパート」感覚です。
オーナーは、投資できる経済的余裕がなかったかもしれないし、投資したところで「若い娘には所詮かなわないよ」って放っておいたかもしれない。地元に住んでいる人達もあんまり人が住んでないのは防犯上不安だとか、にぎわいを損ねるとか言っている。
でもね、ほら、ちょっと屋根裏を覗いてごらん、結構イカしてるでしょ!そう。今だって、ちょっと頑張れば、重ねてきた年輪を活かしながら、若い娘とはひと味違う粋なセクシーさを見にまとうことだってできるんだよ。
そんな素敵なばあちゃんが大好きな人達に住んでもらいたいなあ。酸いも甘いも知り尽くした、セクシーばあちゃん。セクシーばあちゃん、素敵だよ。

施工者の思い:福井 信行/(株)ルーヴィス

今回の「サクラ・アパートメント」において衝撃的だったのは、『ナリワイをつくる:人生を盗まれない働き方(東京書簡)の著者、伊藤洋志さんが主催してくれた床張りワークショップです。そこには建築・建設においてノークレームを目指し、スピード感や仕上り精度を最重視する世界とは全く違うベクトルがありました。参加者がひとつひとつ慎重に一生懸命作業をして仕上った床は、質感があり、どこかぬくもりを感じる仕上りになっています。海外の写真集でよく見る良い質感、良い雰囲気の空間は、そのような繰り返しで出来ているものなんだと感じました。極端な話 「工務店の入らない世界」 というのも素敵な未来のような気がします(笑)。”自分の”家は自分で創る” 自分が満足出来ている床や壁の仕上りにはプロは敵いませんよね。プロはサポート的な役割をすれば良い。今回のような "体感出来る場" をもっと増やしていけるような取り組みに木賃デベロップメントがなって行けば良いなと感じています。

建築家の思い:内山 章/(有)スタジオA建築設計事務所

木賃アパートは現代社会と繋がる窓口の1つの様に感じます。その窓口はここのところずっと閉じられていて、仮に開いていたとしても、誰も気がつかない存在になってました。僕自身も開いているのを横目で見つつも、中をのぞき込む事を躊躇させる存在でした。魅力的に感じつつも、それが今どんな社会的な役割をもてるのか、理解してなかったからだと思います。それはノスタルジーではない、建築の使い方の話です。木造は誤解を恐れずにいえば「プラモデル」的です。切ったり張ったりが容易で、見ればたいていその状況がわかる。だから、そこをほんの少し、現代に合わせて整えてあげる。素養はあるんです。出来る子なんです。だからまだまだ活かしてあげたい。まちへ返してあげたい。僕にとって木賃デベロップメントは、その為のツールでもあったりします。そしてそれを通しての発見の多さに日々おののいているわけです。

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